思い出ハチミツレモン
2009年夏、わたしは高校生だった。
ある日、学校帰りに本屋さんで雑誌を立ち読みしていたときのこと。
なんでもない普通の日だった。
パラパラと流し読みしていると、ハッと目を奪うページがあった。
“え?!今の誰?!”
なんか今、すごくキラキラした人がいた、気がした。
すぐに捲れていったページに戻る。
“この子かっこいい!ものすごくかっこいい!!すっごい子を見つけてしまった!!!”
そう思った。
華奢で細身の男の子。ふんわり柔らかい印象なのに、芯のある眼差しを持つ彼にドキドキと心拍数が上がっていった。高ぶる気持ちのまますぐに名前を確認する。名前の横にはカッコで彼の所属するグループ名が書かれていた。
“(B.I.shadow)”
“あ、この子、ジャニーズJr.のグループの子なんだ…。”
突然落雷が落ちたような、予期せぬ出会い。
当時のわたしは、若手俳優を追っかけるNEWSの茶の間ファンで、正直なところ若手のジャニーズやジャニーズJr.にはあまり興味がなかった。
ただ、連日のメディアで大きく取り上げられていたことから『中山優馬 w/B.I.shadow』『NYC boys』の存在は、ジャニーズの新しいグループなのだと知っていた。
それから数日して、家族と見ていたミュージックステーションにNYC boysが出演していた。
あ、あの雑誌の子がいるはずだって。
「この中にめちゃくちゃかっこいい子がいるの!」
一緒に夕飯を食べていた母に訴える。
「見て!この子!後ろの子!NYCの3人より絶対かっこいい!!いちばんかっこいいから!!見て!!!」
ごはんそっちのけでテレビの画面に張りついて指を指す。
「中島健人くん!!!!」
ひたすら、この子がいちばんかっこいい!と繰り返し訴えてた記憶がある。今思えば、NYCの御三方よりかっこいいだなんてよく言えたもんだなって当時の自分に言ってやりたいけど。(笑)
その頃のわたしは年上の男性に憧れがちだった。お年頃っやつ。
そんなわたしのハートを一瞬にして奪った年下の男の子は、中島健人くんだった。
健人くんは特別だった。
一瞬でだいすきだった。
そのままわたしはジャニーズJr.の中島健人くんにズブズブとハマり今日までの日々を熱心に応援することに……は、なぜかならなかった。
理由は単純に、そのとき他に夢中なものがあったから。現実はそんなものだ。
数年後、彼の所属する別のグループを応援してるとはつゆ知らず。健人くんの出演するドラマを見たり程度かな、ひそかに彼を見守ってた。
あとね、もうひとつ。
あのとき、Mステ見てたとき、お母さんに「この4人はこれでいいの?」って言ったんだよ、わたし。
いや、それはもうコテンパンに言った。(笑)
こんなかっこいい子後ろで踊らせるなんて事務所の目は節穴か!そんなことよりお前ら4人はこの立ち位置で満足なんか!もっと高み目指せるだろ!くらいには言ったと思う。(笑)
何にも知らなかったからこそ言えた、めちゃくちゃ貴重な発言だよね。
そのとき彼らが、事務所に入って1年前後のエリートジャニーズJr.だなんて知らなかったし、半永久的にあのグループで活動するものだと認識してたから。
今の自分が見たら、また新しい推されJr.か〜出しゃばってんな〜くらいにしか思わなかっただろうなあ。
それにしてもなんで、こんな今さっき知りましたみたいな子たちの未来を必死に心配してたんだろう。
あの7人組のことは、全然知らないままなのに、強烈に印象に残ってる。
2019年夏、わたしは大人になった。
あの7人はもう一緒にはいない。
わたしが初めて健人くんを見た雑誌が何だったか覚えてないし、NYC boysが出た歌番組の録画も、うちには残っていない。
幻だったのかな。
だけど、無知だったわたしが感じた衝撃的なときめきは、10年経っても色褪せず鮮明に残ってる。ずっと心の中に。
7人ともそれぞれの今がいちばん輝いてるよ、だなんてわたしが言えたことじゃないね。
だけど、あのときの少年たちの姿を今、わたしたちが目にできるてるのは、当たりまえじゃないよね。
幼いころの初々しさやきらめきが未来に繋がってるような気がするけれど、懸命に前に進みつづけて生きぬく今こそが、懐かしいあの日をピカピカに光らせるのだと思う。
今が過去の在り方を決めていくんだ。
青くて酸っぱいレモンは、じっくりとハチミツにつけてみよう。
とろりと甘くなって柔らかくなって、少しだけほろ苦い。
あの日の思い出は、今日も進化しているのだ。
*
ちょうど2年前、これを文章にしよう!と決めました。うずうずじりじり、ちょっとビクビク待ちつづけた2年間。
10年だって。
とびきりのハチミツレモン、いただきます。
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