花が咲くころ

世界にひとつしかない薔薇の花束をあなたに贈ります

春、君に会う道のり


彼らに会える、そう胸を高鳴らせる春は何度目か。


いつもより目が冴えてることに気づかないふりをしながら布団に潜る夜。いつもより早く目が覚める朝。

真新しい洋服に着替え、時間をかけて化粧して、先週美容院へ行ったばかりの髪の毛をセットする。アクセサリーはどれをつけようか。

携帯、財布、ポーチに、双眼鏡、ペンライト、メモ帳と、忘れものがないかと数回確認して家を出る。BGMはもちろん、これから会う君たちの歌。わたしはこれからコンサートへ行く。

アリーナへ向かうとき、最寄り駅や電車内で同じ行き先の人を見つけたらラッキーだ。

ドームへ向かうとき、何時に家を出ようがどの車両に乗ろうが必ず同じ行き先の人がいて、5万人という数字の驚異を感じる。

飛行機に乗る前はDEAN&DELUCAで、新幹線に乗る前はスターバックスで飲みものを買うのが恒例行事。友達と合流して食べるお昼ごはんは、何だか胸がいっぱいで味は大抵覚えてない。

少しずつ増える人波に流されながら向かう会場。会場の中へ入るとステージセットや独特の空気感に圧倒される。期待と不安と緊張が入り混じって心拍数が増していくのがわかる。

 


こうやって当たり前のようにやってきていた春の日が、今はなかなか難しい状況にある。

もういくつねると、とばかりに待ち遠しくして、ふわふわとしていたこの季節は今、先の見えない不安に包まれている。いつものルーティンも、何度体験してもやってくるドキドキも、貴重なことのように思えちゃう。


毎回感じる胸の高鳴りは、きっと自分がチケット代を支払ってすきなアイドルと会う、だけじゃないから。その間には、機材を運び組み立ててくれる人、グッズを販売してくれる人、チケットを発券して会場案内をしてくれる人、大勢のスタッフさんがいる。遠方から向かう予定で、予約していた高速バスや新幹線、飛行機の一席。宿泊先の一室。あなたのために、あなたのおかげで、たくさんの人が動いて息をしている。そういう人たちが連鎖して数万人のお客さんがひとつの場所に集まっているんだ。


こんなにたくさんの人が動いてる。そう思うのに、地球規模の視点で見たら、天災やウイルスにかかってしまえば、たった一瞬、たったこれっぽっちの小さな存在なんだと思い知らされる。

こんなとき、真っ先に思い出したのが舞台『Johnnys' World』だった。この舞台では、様々な歴史上の"悲劇"を暦とともに振り返っていく。中でも、少年たちが裸で拳銃を持って歩く姿は印象に残っている。戦争の悲惨さを忘れてはいけない、若い世代へ伝えていかなければならない。平和があるからこそ、今日ここでエンターテイメントができているというメッセージだとわたしは受け取った。どうして悲劇と華やかなショーを掛け合わせたのか、不思議でならなかったけれど、ようやく点と点が結ばれたような感覚になった。

今は、エンターテイメントを伝える手段が多様にある。それでも、みんなが安全で安心して過ごせることが大前提でなければならない。そこではじめて"Show must go on"という言葉が生きるのだと感じた。

もうしばらくさみしい気持ちがつづきそうだけど、みんなを守れる判断をしてくれる人たちを応援できてることに心から感謝。


毎度毎度「今日が会えるの最後かもしれない」って思いながらアイドルたちに会ってるスーパーネガティブなわたしが、今は「また会える日がくる」って思えてるの。笑っちゃうよね。いつもと違う道のりも悪くないのかも。


やがて、今を振り返るときが来るのだろうか?

数年後のわたしは、あなたは、今日をどう意味づけてるのだろうか?

未来のわたし、声をあげて、手を取りあって、会いたい人たちに会えていますか?

 

 

 

 

 

 

 

 

36本目

エモーションプロフォンド

 

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薔薇36本の花言葉は「ドラマティック」